「本屋大賞」のニュースを偶然テレビで見た。なんと1位と2位が名前も知られていない新人だと聞いて驚いた。
ニュースでは書店員(だったと思う)が「読んでほしい本を選ぶ賞」だと聞いて、「売れ線狙い」ではなく「読んでほしい本」というのを選ぶ「賞」の存在に少し嬉しい気持ちになった。名前も知られていない2人が選ばれたことがその証拠ではないかと思った。
画面をジーと見ていたら、今、大人気の「東野圭吾」氏の本もチラリと見えたが…。
私はどの本も読んでいないので、この賞について何かを批判とか批評できる立場ではない。最初に書いたように、本の時代ではなくなってきている現代でも、本の文化を作ろうとしている人たちがいるのだなと嬉しいと思っただけだ。
ところで、ネットでこのニュースを見るとニュアンスが一変する。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20090407bk03.htm?from=yoltop
読売新聞系列のものだ。
大賞の湊かなえさんの場合、出版社である双葉社が、「湊かなえプロジェクト」を立ち上げ、本の存在を知ってもらうために複数の書店の書店員とも話し合って「宣伝冊子」を作ったそうだ。
そこまでは事実を書いていると思われるので良いのだが、その後が問題だ。
テレビを利用して、有名人に推してもらったとか(事実なのだろうが)、特に最後のところでは、いわゆる「重鎮」を出してきて「(本屋大賞が)人気投票に変わってきている」というコメントで終わっている(マスコミニュースは話半分。ネットニュースは話10分の1というのが私の感覚。現に何をもって「人気投票に変わった」というのか「重鎮」の言葉が紹介されていない)。
私自身、出版社の委託営業パーソンとして書店(小規模、あるいは大きくても都心から離れたところばかり)を回った経験があるが、どこでも聞かれるのが「テレビで紹介された本しか売れない」という書店員や店長の声だった。
私はとことん営業に向いていなかったらしく、なんの貢献もできなかったが、何十店という店を回って同じことを聞いたし、面出し・平積みしてある本はいかにも「とりあえず売れそうな本」ばかりだった。
放置して、ぐっちゃんぐっちゃんになっている書棚を2時間くらいかけて自分流に勝手に直したこともある(どうせ棚担当者にやる気がないのだし、店長に見られたけどなんの注意もされなかった…それもどうなんだろう…完全にボランティアよ…)
その際に、多少並べ方を工夫したが、何せ仕入れがめちゃくちゃだから限界はありましたが…たぶん返品もいい加減。日付だけで返してたんじゃないかな。結果はいわずもがな。行くたびにぐっちゃんぐっちゃんになってました(汗)
本の流通には複雑な仕組みがあって、なまなかなことでは店の思い通りにはならない面がある。詳しい説明は省くが「絶対に売れる本」を確保(仕入れ)できるだけでもありがたいという状況。
この状況で「自分が売りたい本」よりも「売れる本」を店頭に置いて店がつぶれないことを優先するのは仕方がないことなのかもしれないというのは分かる。
書店営業を数年で、やめてしまった上にたいした実績もあげられなかった私が言うのもなんだが、上記に書いたようなことを考えているのはほとんどの書店が同じ。「売れる本の奪い合い」。それも書店によってハンデがある中で。
「何か違う」といつも考えていたものだ。
私は、書店とは、客のニーズに応えるのはもちろんだが、出版文化に寄与する唯一の場所なのではないかと考えている。
現在は最初からほしい本が決まっている場合はネットで買えば充分だ。送料がいらないサービスもある。
では、書店にしかできないサービスとは何か。時間・手間隙もかかる大変なことだが、徹底したリファレンスサービスだと思う。そして、もう一つが「読んでほしい本」「埋もれていく良い本」を世に広めること。私はそう思う。
現に店舗を持たず、しかも正式な書店で(説明は省きますが、正式な書店になることはとても大変なことです)、つぶれることなく営業を続けている書店を知っています。
「人と同じことをしていてはダメだ」
「常に新しいことにチャレンジしなければ」
という出版社の友人の言葉を思い出します。
本の文化が薄れていくということは出版社が危機なのも同じ。
書店にも通じる言葉ではないかと思う。
「人と同じことをしていてはダメ」というのは一見ハードルが高そうに見えるけれど、ほとんどの人は同じことをしているので、そんなにハードルは高くないと私は思います。ほんの少しの本気を出して実行するだけだと思います。
ネットで本を買う時代だからこそ、心ある出版者・編集者・書店員・書店店長、そういったリアルなつながりが今求められているのではないかと思いました。
そうそう、悪口?ばかりではなんなので、良い例も書いておきますね。
漫画専門店に多かったのですが、私から見たら「高校生?」と見間違うような若い店長(女性)が、漫画知識のない私を馬鹿にすることなく、私が預かってきた発注票を見て、真剣に考えて発注していた姿が印象的でした。店は客でにぎわい活気にあふれていました。ちなみに超郊外です。
また、近くに大学があるという以外なんの利点もない書店の英語の本担当の若い女性が、私が「とても頼めない」と思っていたことを提案してくれました。「思い切って大量に仕入れてフェアをしたい」ということでした。数百冊の信じられない数の発注書を持って帰り、次回その店に行った時、特別の棚が作られていて横断幕のようなものまで作られていたのには驚きました。本当は私が提案しないといけないのに…。
彼女は「おかげさまで売れ行き好調です!」と言ってくれました。おかげさまもなにも「あなたの力ですよ…」と私は心の中で思っていました。それと、私が扱っていた本の質ですね。同業他社の本はカラー表紙。私が扱っていたのは地味。それでも彼女は私のほうを選んでくれた。彼女はすごいと思いました。
それと女性ばかりではなんなので男性も一人。
その書店は1階は漫画と文芸書、2階が専門書という、都心から外れた場所にある書店としては売り場面積も大きく、「こんな田舎でこんな専門書売れるのだろうか?」(ごめんなさい!)という私の及び腰などまったく無視していつも「よくいらしてくださいました」という丁寧な挨拶に始まり、棚にいっしょに行って2人で検討しました。自分が扱っていた本が何なのか勉強はしていましたが、まったく追いつかずひやひやでした。彼の暇な時間を狙って行くのですが、それでもお客さんは来ます。彼の接客中は邪魔にならないように待機し、私なりに棚を観察していました。彼の接客態度にも誠意がにじみ出ていたのを覚えています。私は新刊本の発注書を持って行っただけです。
今、思えば、冷たい担当者もいたけれど、それは売れ行きがシビアだったからだし、温かく迎えてもらえたのは「営業の人など来ない」書店ばかりを回っていたからだと思います。無能の私をうまく使って店に貢献しようとする姿、今、思い出しても感動します。
書店さん、ネットに負けないでほしい。書店好きの私としては心からそう思います。
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